LHC-ATLASによるHiggs 湯川結合の測定


素粒子の標準模型では素粒子の質量はHiggs粒子との相互作用により与えられるとされています。欧州CERN研究所のLHC加速器では、Higgs粒子の研究のために陽子を加速し、7TeV (2011年)または8TeV (2012年)のエネルギーで正面衝突させることでHiggs粒子の発見に成功しました。それまでは素粒子とは、物質をつくるスピン1/2のQuarkやLepton、力を伝えるスピン1のGauge粒子しか発見されていませんでしたが、新たに真空と同じ量子数であるHiggs (これが素粒子であるかは未確定)が加わることで標準模型が記述するすべての粒子が見つかりました。

標準模型ではBrout-Englert-Higgs機構によりGauge粒子に質量を与えます。 本来Gauge原理により質量をもってはいけない力を伝える粒子にたいして、「真空」状態を変更することで質量を生み出すという、南部博士の「自発的対称性の破れ」の考えに基くものです。2012年のHiggs粒子発見の段階では実際にZ粒子やW粒子といった質量のある力を伝える粒子とHiggsとの結合しか観測されていませんでした。

2012年で収集されたすべてのデータを解析することで、新たに最も重いLeptonであるτ粒子にも質量を与えていることを確定しました。さらQuarkであるBottomについても統計的に十分な有為ではないですが、標準模型の記述するように質量を与えていることに矛盾しない結果が得られました。

2016年現在、LHCは衝突エネルギーを13TeVに上げることで多くのHiggs粒子の生成を目指しています。HiggsはFermi粒子にも質量を与えるか、万物の素粒子に質量を与えるかの結着はまもなくつきます。


ATLASによるHiggs Couplingの測定(2016/1の投稿論文より)

科研費報告 2016/4
2016/4報告書

ATLAS論文
Higgs Couplingの測定: EPJC76(2016)6
Higgs→τlepton pairの測定: JHEP04(2015)117
Higgs→b quark pairの測定: JHEP01(2015)069