公募研究A01:ヒグス粒子探索のためのタウ・トリガーの開発
代表 | 岩田洋世 | 広島大学大学院理学研究科 | 助手 | 素粒子実験 |
| 吉田勝一 | 広島大学大学院理学研究科 | 助手 | 素粒子実験 |
| | | | 以上2名 |
研究の進展状況とこれまでの主な研究成果
「ヒグス粒子特にSUSYヒグス粒子は大きな分岐比でタウ粒子に崩壊するので、トリガーの段階でタウ粒子を同定することはヒグス粒子探索に非常に有効である。欧州合同原子核研究機構で建設中のLHC加速器を用いるATLAS実験にタウ・トリガーを実現することを目指して、本研究を開始した。ソフトウエアの面からは、ヒグス粒子がタウ粒子に崩壊するモードに於いてシミュレーションを行い、タウ粒子同定の最適条件またそれがトリガーで実現できるか否かを探っている。先行して既に実験が始まっている米国フェルミ国立加速器研究所のCDF実験ではタウ粒子同定に本腰を入れて取り組んでいる。我々は、この成果をATLAS実験のタウ・トリガーに取り入れることが出来るようCDFと協力して研究を進めている。
ハードウエアの観点からは、我々が豊富な経験を持っているシリコンストリップ検出器の性能を最大限に発揮させ、トラッキングの質の向上、インパクトパラメータの分解能の向上に主眼を置いている。それはタウ粒子の大きな特徴である独立したトラック、有限の崩壊長をタウ・トリガーに利用するためである。平成14年8月、欧州合同原子核研究機構に於いてATLAS実験用のシリコンストリップ検出器のビームテストを行った。放射線損傷を受けた検出器および受けていない検出器をテストし、検出器の最高性能および放射線損傷による劣化がタウ粒子同定に及ぼす影響を評価すべく目下解析中である。
研究成果公表の状況(主な論文等一覧)
(1). Y. Iwata et al., “A radiation damage test for double-sided silicon strip detectors”, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A489, pp88-94 (2002).
(2). 岩田洋世 他、“CDFⅡでの荷電ヒグス粒子探索の可能性”、日本物理学会 於立教大学、平成14年9月14日