申請までの準備研究・調査の状況
計画研究A01関係
- 日米科学協力事業(高エネルギー物理学)CDF実験
- 平成10/11年度 科研費補助金 基盤研究(A)(2)テバトロンによる素粒子の精密測定
(研究代表者 筑波大学 滝川 紘治 補助金合計 2,350万円)
- 平成11/12年度 科研費補助金 基盤研究(B)(2)テバトロンでのCP非保存の物理
(研究代表者 筑波大学 金 信弘 補助金合計 1,420万円)
CDF実験グループはテバトロン陽子・反陽子衝突実験のために日米伊3ケ国の
国際協力のもとに1979年に結成され、以来、日米科学技術協力事業(上記1、
最近4年間の実績を示す)として、筑波大学・KEKを主とする日本グループは
主導的に建設、稼働、解析を行ってきた。1991年以降は大阪市立大、広島大
なども新たに加わり、CDF検出器の増強のために、1)中央部μ粒子検出器(筑波大、
大阪市立大)、2)端冠部電磁カロリーメータとプリシャワーカウンター(筑波大、
早稲田大)、3)SVX-II(広島大、岡山大)、4)ISL(筑波大、大阪市立大)、
5)TOFカウンター(筑波大)の設計製作を担当してきた。1)はトリスタン実験での
経験を生かし製作を終了し、すでにRun-Iの段階から稼働している。バック
グラウンドの少ないμ粒子を検出するのに用いられ、トップクォークの発見に
寄与した。2)は筑波大学の長年のカロリーメータ開発技術を生かして製作を行
い、現在はフェルミ研究所で最終調整の段階にある。また、3)は広島大学の
グループによるシリコン検出器の開発が成功し、CDFでの採用が決定された。
浜松ホトニクスとの共同研究で蓄積された技術を用いて、センサーの製作を
完了した。4)の設計は浜松ホトニクスのノウハウを生かして行われ製作は完了した。
3) 4) 5)には上記2の科研費が使われている。
以上の検出器の他に、新たに増強されるものとして高放射線耐性シリコン
飛跡検出器がある。この検出器を2003年までに完成し、既存のシリコン飛跡
検出器と入れ替えた後、2004年からデータ収集を再開する予定である。 こ
の検出器に用いるシリコンセンサーと信号ケーブルは筑波大学グループと
岡山大学グループが共同で製作する。この検出器はBハドロンの飛程測定と
ボトム・クォーク・ジェットの同定に有効でヒッグス粒子の探索に大いに
役立つことが期待される。
計画研究A2関係
- (1)科学研究補助金・特定領域研究「CP非保存の物理」領域代表者:三田一郎(名古屋大学理学研究科教授)期間:平成9−12年度
計画研究課題名:「粒子・反粒子混合におけるCP非保存の研究」
計画研究代表者氏名:相原博昭
研究者氏名:相原博昭,田島宏康,羽澄昌史,長島順清,原隆宣,渡辺靖志,金行健治
研究経費:189,800千円
BファクトリーでのBelle実験において,小林・益川理論から期待されるB中間子崩壊過程のCP非保存の研究
を進めた。特に,第1世代のシリコン検出器を用いて,B0→ J/Ψ Ks, J/Ψ KL などの崩壊時間を測定した。
本申請の3ヶ月前,平成12年7月25日までのデータから,
ユニタリー三角形の第1の角度φ1の測定を行い,
sin2φ1=0.45+0.44-0.45という予備的な結果を得ることに成功した。
これを同年7月31日の
第30回高エネルギー物理学国際会議で発表し,国際的に高い評価を得た。
この結果は,まだデータ量が十分ではないが,小林・益川理論
と矛盾していない。
Bファクトリーのビーム強度の増加に伴い実験精度は向上するので,
よりはっきりとした結論が出るのは時間の問題である。
一方,同計画研究第2の目的である高精度2次元位置測定器ピクセル検出器の開発についても,その開発項目のほとんどすべてを終了し,第2世代シリコン検出器の設計がほぼ完了している。本申請は,この開発研究の成果に基づき,Bファクトリーでの第2世代シリコン検出器実機の製作経費を主たる経費として申請している。
Bファクトリーでの実験は予定どおりに進んでおり,実験装置の精度をより高いものにすることによって標準理論を超える現象を発見したい。
- (2)文部省日米科学技術協力事業
期間:平成8−12年度
研究課題名:「ピクセル検出器の開発」
研究者氏名:相原博昭,田島宏康,Kevin Einsweiler (Lawrence Berkeley Laboratory)
研究経費:125,000千円
米国カリフォルニア大学バークレーの高エネルギー物理研究所と共同して,ハイブリッド型ピクセル検出器の組み立てと読み出しLSIの耐放射線化の研究を行った。その結果,ハイブリッド型ピクセル検出器のバンプボンドによる組み立てが可能になった。また,LSIの耐放射線性が劇的に向上し,約$20Mrad相当の
ガンマ線照射まで稼動するLSIの製作に成功した。
- (3)財団法人交流協会補助金日本台湾共同研究事業
期間:平成11年度
研究課題名:半導体を使用した放射線検出器の開発
研究者氏名:相原博昭,田島宏康,Wei-Shu Ho (台湾大学)
研究経費:8,000千円
浜松ホトニクスと協力して漏れ電流が少なく,かつノイズの少ないシリコンストリップを開発した。
- (4)財団法人交流協会補助金日本台湾共同研究事業
期間:平成12年度
研究課題名:超細密半導体技術を使用した放射線検出器の開発
研究者氏名:相原博昭,田島宏康,Wei-Shu Ho (台湾大学)
研究経費:6,500千円
第2世代シリコン検出器製作に不可欠な超細密細線を使ったカプトンケーブルを試作した。
- (5)科学研究費補助金・基盤(B)(一般)
期間:平成12−14年度(継続中)
研究課題名:大強度衝突型加速器実験用シリコン・ストリップ検出器信号読み出しLSIの開発 研究者氏名:田島宏康,田中真伸 研究経費:3,100千円
シリコンストリップ読み出しLSIに,トリガー機能を有する高速アンプとデジタル制御回路を
装着した新しいLSIを開発した。
以上の開発研究によって,第2世代(擬ピクセル型)シリコン検出器実現に必要なコンポーネントの開発はすべて完了しており,いつでも実機製作にとりかかれる体制を整えた。さらに,我々は、
特定領域でのCP非保存測定の結果に基づき,次のステップである超対称現象の測定
にとりかかれる段階に到達している。
計画研究A3関係
- (1)科研費: 特定領域研究「CP非保存の物理」 / 期間: 平成9年度−平成12年度
課題名:A03班「CP非保存と物質宇宙の起原についての理論研究」
研究者氏名: 三田一郎 (総括班代表者ならびに研究班A03代表者)、
研究経費(千円):
総括班 平成9年度 17,900 平成10年度 16,600 平成11年度 18,400 平成12年度 10,000
研究班A03 平成9年度 19,200 平成10年度 18,300 平成11年度 20,000 平成12年度 20,000
研究経過・成果: 小林・益川理論はB中間子崩壊で大きなCP非対称性の存在を予言する。実験研究分野は、高エネルギー物理学研究所およびスタンフォード線形加速器研
究所でBファクトリーを建設し、これを確認、精密測定する。われわれは、CP破れの
機構を理論的に解明することを目指す。具体的には、PQCDをもとにBの二体崩壊を計
算する手法が有望であると判断し、PQCDの研究を進めた。B→ππ、Kπ、Dlν、π
ν、σπ、DKなどB中間子の2体崩壊過程をPQCDで計算した。B→Kπでは、ペンギ
ン・グラフから来るannihilation diagramが大きく寄与し、それがfinal state
interaction phaseを生ずることを発見した。この成果は、世界で注目を浴びてい
る。
- (2)科研費: 特定領域研究「CP非保存の物理」 / 期間: 平成
9年度−平成12年度
課題名: 「直接的CP非保存の研究」
研究者氏名: 大島 隆義 (研究班A02代表者)
研究経費(千円): 平成9年度 51,900 平成10年度 57,000 平成11年度 59,500 平成12年度 32,600
研究経過・成果: 特定領域A02班代表者として、名大グループの責任者として、
Belleにて直接的CP非保存を検出すべくB→DK, Dπ, Kπ事象の解析、new physics探
索として稀崩壊反応B+→K+ K+ π-の研究などなど、また、タウ解析グループのリーダーとして本申請書に記した各種の解析課題を進めている。「研究業績」にリストし
たように、これらの成果を論文発表、国際会議発表した。TOP counterを発案し、そ
の実用化を目指し開発中である。この過程において光検出器の開発
をも行い、非常に高く評価される成果を挙げた(「業績」参照)。
- (3)科研費: 基盤研究(C) / 期間: 平成12年度ー平成15年度
課題名: タウ粒子の崩壊過程におけるCP非保存現象の研究
研究者氏名: 林井久樹
研究経費: 平成12年度 230万円
研究経過・成果: Belle検出器で最初の1年で収集した(6fb-1 )のデータを用いて、τ→ππoν崩壊におけるCP非保存現象の探索を進めている。これまで得られた
破れの上限値の値は、8月に大阪で開催された高エネルギー国際会議への投稿論文と
してまとめた。また、アメリカ物理学会( DPF2000)および タウ・レプトン国
際会議( TAU2000)でも発表した。今後さらに統計を積んでより詳しい探索をす
すめる予定でいる。
計画研究A5関係
- 「K中間子稀崩壊実験のための高速波形解析法の研究」
平成5‐7年科研費一般(B) 7,200千円[杉本(代表者)他]
BNL‐E787実験装置に組込んだCsI-エンドキャップγ線検出器での多重粒子の
高速波形分離法の開発を行い,その成果を平成7‐10年(‘95−’98)のBNLでの
稀崩壊モードK+→ π+ννの実験と解析に反映させ
た。
- 「大強度粒子工場における反陽子・K中間子実験に関する調査研究」
平成7,8年科研費 国際学術(学術調査)3,300千円,3,600千円 [杉本(代表者)他]
K中間子稀崩壊物理の実験計画を日米欧で検討し,数回のワークショップにて
将来の国際協力・分担についての方向を定めた。 1999年に,日米加露による
国際共同実験グループが結成され,BNLにて平成12年−14年に E949実験
(E787の後継実験)を行うことになったのは,この調査研究以降続く研究交流
の成果と言えよう。
- 「静止K+崩壊実験用密閉型検出器の開発」
平成9‐11年科研費基盤(B)(2) 8,400千円 [杉本(代表者)他]
静止K+崩壊実験の改善をめざして全立体角にわたり一様でアクティブな物質を
持つ高速検出器の開発を行なった。その成果はBNL−E949実験装置の改善に
あたり貴重な情報を与えた。
- 「BNLにおけるK+稀崩壊モードK+→ π+νν
の検出実験」
平成4‐12年度日米科学技術協力事業(高エネルギー分野)
平成12年度 50,000千円(E949改造費の一部) [杉本(代表者),小松原,小林,
他]
我々は1981年にKEKでの実験結果
[(1.4 x 10-7)(UL:90% C.L.) Asano et. al]を
出版した後,平成4年度(1992)から平成10年までBNLにて日米共同研究として
Upgraded−E787(BNL/ Princeton/ Triumf)実験を行った。平成9年には
初めて1事象の発見に成功し,現在解析中のデータ量は
感度((0.7- 1) x 10-10)に達している。
平成11年度から次期の実験E949のために検出器改造(日本グループはγ線検出器,
高速判定トリガーシステム,モニターシステム,モンテカルロ等を分担)を行い,
来年6月から実験を再開する予定である。
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