計画研究A01:高エネルギー陽子・反陽子衝突によるヒッグス粒子の探索
代表 | 金 信弘 | 筑波大学物理学系 | 教授 | 素粒子実験 |
| 滝川 紘治 | 筑波大学物理学系 | 教授 | 素粒子実験 |
| 受川 史彦 | 筑波大学物理学系 | 助教授 | 素粒子実験 |
| 原 和彦 | 筑波大学物理学系 | 講師 | 素粒子実験 |
| 清矢 良浩 | 筑波大学物理学系 | 講師 | 素粒子実験 |
| | | | 以上5名 |
米国フェルミ研究所におけるテバトロン陽子・反陽子
衝突型加速器を用いて,CDF実験グループは1985年の初衝突以来,世界最大の重心系
エネルギー1.8 TeVでの陽子・反陽子衝突実験を遂行してきた。
1996年2月に物理ランI (Run-I)を終了し,現在テバトロンではビーム輝度を10倍以上増強する
ための入射器の大幅な改良を完了した。この加速器性能の増強と平行してCDF検出器
の飛跡検出器、端冠部カロリーメータ、前後方ミュー粒子検出器など多くの部分
やDAQシステムなどを増強した。2001年春に始まる物理ラン(Run-II)ではトップ
クォーク生成崩壊の精密測定や、BシステムでのCP非保存の測定、
軽いヒッグス粒子や超対称性粒子などの探索に成果が期待される。
CDF日本グループはビームパイプに最も近い、SVX-IIとISLの2つのシリコン
飛跡検出器、端冠部電磁カロリーメータ、端冠部プリシャワーカウンター及び
TOFカウンターの製作を分担し、米国やイタリアの研究者と共同で製作した。
また現在新たに計画中の高放射線耐性シリコン飛跡検出器の開発研究にも携わっ
ている。RUN-IIでの物理目的を計画どおり達成するためには、これらCDF検出器
の増強を予定どおり完了させることが重要である。特に2003年以降に使用される
高放射線耐性シリコン飛跡検出器を製作すること 、CDFの事象再構成プログラム
を整備すること、さらにRUN-IIでの物理解析のためのソフトウェアを開発をする
ことはとりわけ重要である。これらを計画通りに遂行し、速やかに物理解析を
行って質量起源の粒子、ヒッグス粒子を探索することがこの研究の目的である。
本計画研究の研究計画・方法は以下の通りである。
研究は,米国フェルミ国立加速器研究所の陽子・反陽子衝突型加速器
テバトロンおよびCDF検出器を用い,陽子・反陽子衝突によって生じる
$B$粒子の崩壊を再構成し,その性質を調べることによって行う。
テバトロンは1996年以来の増強により,瞬間輝度
1032cm-2s-1および重心系エネルギー
2 TeVを達成する見通しである。また,CDF検出器も
高輝度に対応するための大幅な増強がなされ,
現在衝突ビームを用いて試運転を行っている。
2001年春より本実験が開始され,2年程度の期間に積分輝度
2fb-1に相当する衝突事象が取得される。
これはこれまでのデータ量の20倍に当り,数多くの成果が期待される
平成14年度
高放射線耐性シリコン飛跡検出器に用いるシリコン・センサーの大量生産を行う。
この生産時には,
企業と協力して品質検査を行う。このシリコン・センサーをフェルミ研究所に送り、
そこでシリコン飛跡検出器に組み上げた後に再度検査を行う。この組み上げと
検査は米国側研究者と共同で行う。
検出器の製作と平行して,事象再構成プログラム,B同定のプログラムを完成
させ,2001年春から収集されるデータの解析を進め,目的で述べた物理の解析の
為の検討を行う。物理データは本研究費で購入するファイルサーバーに保存する。
プログラムの完成,物理の検討は現有の筑波大学の計算機と
新たに購入予定のパソコンを用いて行なう。
年度末までには1.1fb-1程度のデータが取得される見込みである。
本計画研究は,CDF 実験グループの他のメンバー
とも密に協力して進める。その為に,月一度位の頻度で研究状況をまとめて
議論するミーティングをテレビ会議を用いて行う。
平成15年度
引き続き衝突データの取得を行う。
年度末までには計2 fb-1の衝突事象が蓄積される。
この大量のデータの処理・解析のため,パーソナル・コンピュータを追加し
計算能力を増強する。図1に示されるようにヒッグス粒子の質量が120GeV/c2以下であれば,
95%の信頼度で検出できる。
平成16年度
一旦データ取得を休止して、高放射線耐性シリコン飛跡検出器を
CDF検出器に設置する。その後引き続き衝突データの取得を行う。
年度末までには計3.8fb-1の衝突事象が蓄積される。
この大量のデータの処理・解析のため,パーソナル・コンピュータを追加し
計算能力を増強する。図1に示されるように
ヒッグス粒子の質量が130GeV/c2以下であれば,
95%の信頼度で検出できる。
平成17年度引き続き衝突データの取得を行う。
年度末までには計7fb-1の衝突事象が蓄積される。
この大量のデータの処理・解析のため,パーソナル・コンピュータを追加し
計算能力を増強する。図1に示されるように
ヒッグス粒子の質量が180GeV/c2以上であれば,
95%の信頼度で検出できる。
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