計画研究A03:タウレプトンの物理
代表 | 大島 隆義 | 名古屋大学大学院理学研究科 | 教授 | 素粒子実験 |
| 三田 一郎 | 名古屋大学大学院理学研究科 | 教授 | 素粒子理論 |
| 千代 勝実 | 名古屋大学大学院理学研究科 | 助手 | 素粒子実験 |
| 林井 久樹 | 奈良女子大学理学部 | 助教授 | 素粒子実験 |
| 山口 晃 | 東北大学大学院理学研究科 | 教授 | 素粒子実験 |
| | | | 以上5名 |
レプトンでのCP/T非保存の
探索、稀崩壊(τ→μγ、neutrinoless 3 charged particleによるLFV, LNVの研
究)の探査などは、Higgs粒子、超対称性モデルなど現在の標準理論を越える理論の
観点から大いに期待されている課題である。ベクトル粒子の磁気双極子モーメント
(MDM)の検出は、未だデータもなく、実験結果はSU(3)、クォーク・モデル、WWγと
の関連で新たな理論的関心を引き起こすと期待されている。物理研究は、各課題ごと
申請者等が責任者となり、Belleのタウ解析グループの一貫として、共同研究のもと
で進める。具体的には、CP/T非保存の研究は、大島、千代(名大)がe+e-→τ+τ-;
τ→ e/μννの反応を、林井(奈良女大)がτ→ππν、Kπν崩壊を分担する。稀
崩壊は山口(東北大)が、MDMやテンソル型相互作用の探索は大島、千代(名大)が
中心となり進める。理論面については、三田(名大)が担当する。
一方、TOP counterは、他の箇所でも記述したように、全く独自の発案であり、DIRC
検出器のアプローチ法よりも、コンパクトで製作が簡単で、かつ高い識別力を有す
る。名大が中心となり開発を進めるが、奈良女大、東北大は各大学拠点で研究分担部
を遂行するとともに、ビームテストなどの共同作業は全体で行う。また、浜松フォト
ニクス(株)との光検出器の開発研究も名大グループが中心となりながら、全体で行
う。
研究課題を、以下の3つに分類する。(1) 標準理論の検証、(2) レプトン・セクターの
CP/T非保存または不変則を高い感度で探究し、標準理論を越える新しい物理を探る。
純レプトン過程でのこの研究は、未だ試みられたことのないユニークな探究法であ
る。(3)稀崩壊や崩壊禁止事象の検出を行い、新しい物理の発見を試みる。このなかで
も、われわれが最も重点を置き、最も興味をもつ課題は、(2)と(3)である。具体的に
は、
Bファクトリーはタウ・ファクトリーでもある。CP非保存の研究をB中間子からレプト
ンへと展開することにより、KEKB/Belle実験を発展させ、果実を確実に採り入れた
い。隔年に開催される今年のTAU2000会議(Victoria, Canada)では、Belleなら
びにBabarの両Bファクトリー実験の今後の研究成果を大きく期待する由、声明され
た。さらに、タウ物理の牽引車的役割が、出席研究者達から待望された。Belle実験
への期待は大きく、2004年の会議開催も要請されている。本特別推進研究によ
り、われわれの研究活力を一層活性化させ、上記課題の成果を挙げる。
平成14年度
KEKB/Belle実験を継続し、ルミノシティーの蓄積を続ける。物理解析を並行し進め
る。特に、KOLARB/TAUOLAを書き換え、新しい物理機構を採り入れる作業が必要不可
欠となる。初期の成果として、CP/T非保存や稀崩壊の論文発表を目指す。
TOP counterのテスト機ならびにテストベンチを奈良女、東北大に準備(高額備品を
含む)。名大では、TOP counterの光学特性の詳細測定と宇宙線テストを計画する。
また、光検出器の改良品の検討と複数異型の発注(高額消耗品)を行い、それらのテ
ストを行う。
タウ物理解析においてはディスク・システムの補強が必
要。但し、安価に、かつより容量の大きいディスクを入手するため、各種エレメント
を購入し、自分達で組み立てる方針である(高額消耗品)。MDMなどの論文発表を計
画する。
TOP counterに関しては、改良型の作成(高額消耗品)や宇宙線、ビームテストを繰
り返す。光検出器ではHPD/HAPD(高額消耗品)をも開発対象にする。読み出し回路系
の設計、製作の開発(名大、東北大)を行う。
平成15年度
TOP counterに関しては、基礎的な開発を終え、Belle実験に特定した構造のものの検
討、設計、製作(高額消耗品)に入る。幾種類かの実機(高額消耗品)を作成し、ビ
ームテストをくり返す。光検出器の開発も随分と進展していると考えるので、量産時
の問題点の解決を計る。読み出し回路系のコンパクト化、多チャンネル化を計り、プ
ロトタイプの作製を行う。
平成16年度
タウ物理解析においてはディスク・システムの補強を行
う。新しい物理課題の開拓とそれらの論文発表を行う。TAU2004会議の開催を計
画する。
TOP counterは、実機の大量生産に入る(高額消耗品)。回路系も相当する量産へ入
る(高額消耗品)。
平成17年度
基本的には前年度と同じ。しかし、タウ物理も新しい段階へと移行する時期になると
推測する。それまでの、進展をもとに次世代へ如何に飛躍するか、を課題とする。
TOP counterは、大量生産からBelleへの装着作業へと移行する。
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