計画研究A05:荷電および中性K中間子の稀崩壊の精密測定
代表 | 杉本 章二郎 | 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所 | 教授 | 素粒子実験 |
| 小林 正明 | 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所 | 教授 | 素粒子実験 |
| 小松原 健 | 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所 | 助手 | 素粒子実験 |
| 野村 正 | 京都大学大学院理学研究科 | 助手 | 素粒子実験 |
| 笹尾 登 | 京都大学大学院理学研究科 | 教授 | 素粒子実験 |
| | | | 以上5名 |
小林益川行列の要素、Vtdの大きさを測定するために、
BNLでのE949実験を行って、シグナルを数事象観測する。
この物理実験を通して,より大強度K+ビームを用いる実験手法の
確立を,ハード・ソフトウェアの両面から行う。
その後、FermilabでCKM実験を行い、約100事象観測することにより、
Vtdを約5%の精度で決定する。
100個以上のK+→ π+νν事象を検出する次世代K+実験装置を設計するには,稀崩壊実験での豊富な経験と共に,数多くのR&Dが必要である。このような
事情からフェルミ研究所(FNAL)のCKMグループ(K+→ π+ννの飛行崩壊実験を提案中)は,
1999年にBNLの我々のグループ(K+→ π+ννの静止崩壊実験)に合流し,
日・米・加・露の国際共同研究としてE949実験を行うことになった。
2001‐2003年に日米科学技術協力事業として行う予定のBNL/E949の
実験・解析と並行して,新たに,フェルミ研究所・日本・BNLを核としたR&D(次世
代K+実験装置開発)を進めることが真剣に議論されている。この大強度K+ビームを用いるため
の開発研究を,科研費特定領域の計画研究としてぜひ行いたい。我々のグループは,
稀崩壊実験用高感度γ線検出器や高速バーテックスカウンター開発に対して
長い歴史を有しており,海外研究者からは共同研究を強く望まれている。 ここで開発
された大強度K+稀崩壊測定装置に対する性能評価は,我々のBNL/E787実
験で得られる物理実験データも併用して,より信頼性のあるものとすることが期待される。
BNLにおけるKL→ π0νν実験はKOPIOと呼ばれる。
この実験に対しては2000年春に米国NSF(National science foundation)
より予算も含めた実験許可が下りた。
同年6月には第1回の"Cost Review"を受け、現在は
R/Dの位相に突入している。
実験技術の観点から見ると,
KOPIO実験は次に述べるような著しい特徴を備えている。
即ち事象毎(Event-by-event)に、(1) KL
の運動量を測定する事が可能な事、
(2) π0γγ崩壊により生じた
2つの光子の4元運動量を(測定器分解能の範囲であるが)
完全に決定する事が可能な事である。
こうした測定量を組み合わせれば非常に強力な
運動学上の制約を事象に対して課す事が可能になり、
2つの光子以外に崩壊粒子が検出されていない
という条件を組み合わせれば、バックグランドを
排除する強力な武器となると予想される。
当然のことではあるが,こうしたことを可能にするには
それに応じた実験技術上の「進歩」が要求される。
実験技術的な新たな「挑戦」は次の3点に集約される。
(1) 陽子ビームににマイクロバンチと呼ばれる時間構造を
施す事。これによりKLに対する飛行時間測定を
可能にする。(2) 光子に対しエネルギーのみならず
その運動方向をも測定しうる「完全」光子検出器
を製作する事。(3) 中性子を多く含んだビーム中に
存在する光子に対して十分感度のある検出器を
製作する事。
(1) に関してはパルス幅 278psec のビームが実験により
得られており、少しの改良で実験仕様を満たすと期待される。
(2) についても標識付光子ビームによるテスト実験が行われ
見通しが着く所にまできている。
(3) の課題は我々京都グループが主として取り組んできた
課題である。
我々は中性子に対して不感な光子検出器の開発に取り組んできた。
現在まではアクリル・チェレンコフ・カウンターを主体とする
カロリメーターを検討してきた。
上記カロリメーターについては、原子核研究所(電子ビーム)
および大阪大学核物理センター(中性子ビーム)において
ビームテストを重ね、カウンターの性能を概ね理解できる
ようになった。実験結果を詳細に検討しているところであるが,
実験で要請される性能をほぼ満足するものの性能的に
十分余裕があるとはいえないのが現状である。
従ってこの検出器の改良を試みている。
同時にアクリルの替わりにエアロジェル・チェレンコフ・カウンター
を主体にした光子検出器をも考察範囲に含めて検討している。
これ以外にも我々は、真空中で稼動する高効率荷電粒子カウンター
の検討を開始した。これらの準備は科学研究費(野村:平成11年度奨励研究)
および日米科学技術協力事業(笹尾:平成10年度検出器開発)による。
平成14年度
BNL E949実験のデータ収集。
FNAL CKM実験の測定器の開発。
平成15年度
BNL E949実験のデータ収集、及び解析。
FNAL CKM実験の測定器の製作。
平成16年度
BNL E949実験のデータ解析。
FNAL CKM実験の測定器の製作。
平成17年度
FNAL CKM実験開始。
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