素粒子実験研究室
High Energy Physics Laboratory, Univ. of Tsukuba
連絡先 : 自然学系棟 D208 内線 4270
教授(金 信弘,受川 史彦)
講師(原 和彦,武内 勇司, 佐藤構二)
研究員(戸村 友宣,三宅 秀樹,倉田 正和,永井 康一,永井 義一)
2010年10月
学生数
この研究室では,主に2つの衝突型加速器での素粒子実験を行っている.
アメリカのシカゴ近郊のフェルミ国立加速器研究所にあるCDF (Collider Detector at Fermilab) は,
陽子・反陽子衝突型加速器Tevatronに設置されている検出器である.
1987年より世界最大の重心系エネルギー(1.8 TeV -> 2.0 TeV)で稼働してい
たが,2009年にもうひとつの実験LHC-ATLASにエネルギーは抜かれた.しかし
ながらデータ量は依然多いので,現在もデータ収集を行っている.
CDF検出器において,1994年にトップクォークが見いだされたことは記憶に新しい.
筑波大学素粒子実験室は,CDFの建設の初期段階から主導的に参加し,検出器開発,
物理解析において大きな役割を果たしてきた.
スイス,ジュネーブ近郊のCERN研究所にあるLHC加速器は,陽子陽子の衝突型実
験で,2010年現在,重心系エネルギー7TeVで素粒子実験を行っている.数年
のうちに,設計エネルギーである14TeVまでエネルギーが増強される.
ATLAS検出器は,ヒッグス粒子を発見するために設計された,2つの汎用型検
出器(ATLASとCMS)のひとつである.この研究室では,シリコン半導体を用い
た飛跡検出器の建設に貢献し,データ収集とともに物理解析に取り組んでいる.
素粒子実験研究室は,物理解析と検出器開発において,
現在,以下のテーマについて意欲的に取り組んでいる.
4年次および大学院前期課程の学生は原則として検出器開発を行う.
後期課程より物理解析を始め,博士論文とする.
物理解析(2010年)
CDFやATLAS実験で得られた検出器各部からの情報をもとに粒子反応過程を再現します.
興味深いイベントを選び出し,以下のようなテーマに沿って,解析をします.
- ヒッグス粒子探索 - 質量の根源とされるこの粒子は,素粒子の標準模型
で唯一未確認の粒子である
- 新粒子探索 - 超対称性粒子SUSY,余剰次元,クォークの内部構造など
- 強い相互作用 - ジェットなどの生成を測定しQCD理論を検証する
- トップの物理 - トップクォークの生成と崩壊の精密測定
- ELECTROWEAK - W/Z電弱相互作用を通して,標準理論を検証する
- bクォークの物理 - Bハドロンの生成と崩壊からCP対称性の破れの謎を探る
検出器開発(2010年)
物理現象・素粒子反応の解析のためには,発生した粒子の種類,運動量,
エネルギーなどを正確に測ることが重要です.
検出器の開発研究は,最先端の技術を用いて,意欲的に行われています。
- CDF検出器増強:
2002年よりTEVATRON加速器では,新たにデータ収集(RUN II)が始動しました.
これまでに比べビーム輝度が高く,
衝突間隔が短くなるためCDF検出器の各部においても物理の成果を最大限に引
き出せるように改良が行われ,筑波大では主に以下の2検出器を担当している。
- CDF Plug EM : タイルファイバー型端冠部電磁カロリメーター
- CDF ISL : シリコンマイクロストリップ飛跡検出器
Plug EMは筑波大学で開発製作され、宇宙線による性能評価を経て、フェル
ミ研究所で組立てられた。
ISLはシリコンの半導体技術を用いた高分解能の飛跡検出器で、センサーの設
計と製作を分担し,CDFに組み込まれた。
CDF検出器:
検出器中心の陽子反陽子衝突点からは、多数の粒子が発生する。それを囲むように設置された
飛跡検出器により粒子の運動量を決定し、その外側の電磁及びハドロンカロリメーターでエネルギーを測定する。
- ATLAS検出器: シリコン半導体を用いたSCT検出器を建設し,ATLASに組み
込んだ.現在は,その運転とともに,2020年頃に予定されているLHC加速器の
増強に対応できる,p型半導体を開発している.さらに,読みだし回路をセンサー
と一体化させるピクセル型検出器をSOI(Silicon-On-Insulator)技術を用いて
開発している.
- 我々はCDF/ATLASに続く次の実験として、現在計画中の次世代の
ILC加速器の為や,ニュートリノの質量を測定するためのSTJ検出器の開発にも携わって
います。
- ILCは、TeV領域の重心系エネルギーを持つ電子陽電子
衝突型線形加速器です。我々は、ILCに設置されるカロリメーターの開発
を担当し、CDF plug EM で蓄積したノウハウをフル活用し、この開発をリード
しています。多チャンネル型光子検出器MPPCを光読みだしのために開発してい
ます.
- STJは、超伝導トンネル接合を用い,質量のあるニュートリノが崩壊する
際に発生するmeVの光を検出できる光検出器です.将来,人工衛星に載せ,宇
宙で観測を行います.
役に立つ教科書
- Quarks and Leptons (Halzen and Martin)「クォークとレプトン」 培風館
- Gauge Theories in Particle Physics (Aitchison and Hey)「ゲージ理論入門 I・II」講談社
- Collider Physics (Barger and Phillips)
- Introduction to High Energy Physics (Perkins)
- トップクォークの発見 (近藤都登) 丸善
4年生、院生の生態
自分で選べる研究内容(詳しくはその目で確かめてください)にむかってつきすすむ!
はず....... いやゼッタイそうだ!そうだったはずだ!そうだったかもしれない?スケジュールは、
基本的に自分で決められるが、なにもしてなくても誰も何も言わないから、要注意!! 4年生でも
実験の進展状況次第で学会発表へも行きます。 博士課程では後期に、研究員としてフェルミ研究所に
1.5年程度滞在した後、博士論文を書きます。豊富な機材、高度な計算機環境が用意されています。
後は、あなたのやる気・努力次第です。
卒業生の進路は?
博士課程卒業生の就職実績: KEK、理化学研究所、国立天文台、日立製作所、各大学 (Bern、Penn、Texas A&M、Hawaii、東京、名古屋、新潟、東邦、大阪市大、筑波など)
修士課程、学群卒業生の就職実績: 東芝、NEC、日立製作所、Texas Instruments、ソニーなど
週間スケジュール
火曜 16:30 |
検出器ミーティング
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君がやった実験はここでみんなに発表しよう。適切なアドバイスがもらえる。
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水曜 16:30 |
物理ミーティング
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物理解析の結果の報告。
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金曜 15:15 |
高エネルギーセミナー
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院生や教官がCDF内外の最近の素粒子実験の話題について報告する。
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金曜 16:30 |
全体ミーティング
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週間予定の確認など。
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| *その他に4年生は週2回のゼミ(授業)が行われている。
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年間スケジュール
4月 | 花見 、新入生歓迎コンパで酒を飲む
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5月 | 4年生、研究テーマ決定 これからがんばるぞ!酒を飲む
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7月 | バーベキュー大会で酒を飲む
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夏休み | (院試の人は勉強かな?) たまにはビールを飲む
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9月 | 大学院入試で酒を飲む
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12月 | CDF 日本グループミーティング 忘年会(鍋)で酒を飲む
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2月 | 恐怖の卒論発表 無事に終わって酒を飲む
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| スキー 雪を見ながら酒を飲む
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| D論, M論発表 お疲れさまの酒を飲む
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3月 | 卒業 でも酒を飲む
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クォークは基本粒子ではないと思っている人がいる。
ヒッグスは、俺が見つけると思っている。
ヒッグス粒子でダイエットを考えている。
21世紀の物理は俺が作ると思っている。
日本酒を愛している人
金沢の学会へ自転車でいった人もいる。
家賃を一年半、滞納してる人がいる。
彼女のできない人がいる。
危険な香りの奴がいる。
競馬の好きな人もいる。
スキーのすきーな人がいる。
五時に弁当を買いに走るやつがいる。
さあ、君はどんな人。
2010年12月