計画研究A01:高エネルギー陽子・反陽子衝突によるヒッグス粒子の探索
代表 | 金 信弘 | 筑波大学物理学系 | 教授 | 素粒子実験 |
| 滝川 紘治 | 筑波大学物理学系 | 教授 | 素粒子実験 |
| 受川 史彦 | 筑波大学物理学系 | 助教授 | 素粒子実験 |
| 原 和彦 | 筑波大学物理学系 | 講師 | 素粒子実験 |
| | | | 以上5名 |
研究の進展状況とこれまでの主な研究成果
「陽子反陽子衝突実験によるヒッグス粒子の探索(計画研究A01)」では、米国フェルミ国立加速器研究所の陽子・反陽子衝突型加速器テバトロンおよびCDF検出器を用い,世界最大の重心系エネルギー2TeVでの陽子・反陽子衝突によって生じる事象の性質を調べることによって、素粒子物理研究を行う。2001年春より本実験が開始され,現在データ収集とそれに並行した物理解析が進行中である。
ヒッグス粒子の間接探索としては、トップクォーク質量とWボソン質量の精密測定が行われており、これによってヒッグス粒子の質量が間接的に測定できる。2004年度にこれまでの約4倍のデータを解析して、しかもWボソンが2ジェットに崩壊する質量分布を用いて系統誤差を小さくして、トップクォーク質量を測定した。その結果、世界平均値よりも精度の高いトップクォークの質量173.5 +2.7/-2.6(統計) ± 3.0(系統)GeV/c2が得られた。この結果は米国フェルミ国立加速器研究所と高エネルギー加速器研究機構のインターネット・ニュースでも報道された。この測定結果を用いてヒッグス粒子の質量は94 +70/-56 GeV/c2となり、質量上限値として208 GeV/c2が得られた。この上限値は2004年春時点でのヒッグス質量上限値252 GeV/c2を大幅に下げる結果となった。この研究に関する博士論文1編には、『2004年度筑波大学学長賞』が与えられた。ほぼ同様のトップクォークの質量測定結果は力学的最尤法(Dynamical Likelihood Method)を用いた解析でも得られた。
直接ヒッグス粒子探索を行った結果、軽いヒッグス粒子(MHiggs=120 GeV/c2)についてはWH随伴生成のチャンネルでヒッグスがボトムクォーク対に崩壊するモードで探索した結果、生成断面積上限として4.5pbを得ており、重いヒッグス粒子(MHiggs=160 GeV/c2)についてはヒッグス直接生成のチャンネルでヒッグスがWボソン対に崩壊するモードで探索した結果、生成断面積上限として5.6pbを得ており、さらに高統計のデータを得ることが待たれる。また検出器については、高放射線耐性シリコン飛跡検出器の開発研究を2002年度に終了し、2003年度にはその大量製作を完了し、米国国立フェルミ加速器研究所へ送った。
CDF 実験グループの海外の他のメンバーと週1回度の頻度で研究状況をまとめて議論するミーティングをテレビ会議を用いて行い、緊密な連携のもとに実験を進めている。
研究成果公表の状況(主な論文等一覧)
(1) Results of Top quark mass at CDF were reported in Fermilab internet news and KEK internet news in April 2005 http://www.fnal.gov/pub/today/pdfs/2005/20050421.pdf, and http://www.kek.jp/newskek/2005/mayjun/topquark.html.
To be published in Phys. Rev. D.
(2). D. Acosta, S. Kim, et al., (CDF Collaboration) "Measurement of the tt-bar Production Cross Section Using Dilepton Events in p anti-p collisions at s**(1/2) = 1.96 TeV" Phys. Rev. Lett. 93, 142001 (2004).
(3). D. Acosta, S. Kim, et al., (CDF Collaboration) "Search for Doubly-charged Higgs Bosons decaying to Dileptons in p anti-p collisions at s**(1/2) = 1.96 TeV" Phys. Rev. Lett. 93, 221802 (2004).
(4). D. Acosta, S. Kim, et al., (CDF Collaboration) "Measurement of the J/psi Meson and b Hadron Production Cross Sections in p anti-p Collisions at s**(1/2) = 1960 GeV", Phys. Rev. D71, 032001 (2005).
(5). D. Acosta, S. Kim, et al., (CDF Collaboration) "Search for Electroweak Single Top Quark Production in p anti-p Collisions at s**(1/2) = 1.96 TeV", Phys. Rev. D71, 012005 (2005).
(6). T. Acosta, S. Kim et al., (CDF Collaboration) "Measurement of the W+W- Production Cross Section in p anti-p Collisions at s**(1/2) = 1.96 TeV using Dilepton Events", Phys. Rev. Lett. 94, 211801 (2005).
(7). D. Acosta, S. Kim, et al., (CDF Collaboration) "Search for B0(s) --> mu+ mu- and B0(d) --> mu+ mu- Decays in p anti-p Collisions at s**(1/2) = 1.96 TeV", Phys. Rev. Lett. 93, 032001 (2005).
(8). D. Acosta, S. Kim, et al., (CDF Collaboration) "Measurement of the tt-bar Production Cross Section in p-bar p Collisions at sqrt s = 1.96 TeV using Kinematic Fitting of b-tagged Lepton + Jet Events", Phys. Rev. D71, 072005.
|